TypeTalks 第36回
金属活字の組版印刷を行う嘉瑞工房代表の髙岡昌生さんと、欧文フォントに詳しいTypeCacheのakira1975さんをお迎えして、オプティカルサイズの欧文書体について、お話をうかがいました。
金属活字の時代には活字の大きさごとに文字のデザイ ンが違っていたのを知っていますか? 当時は使われるサイズにあわせて、文字の形を調整して活字に彫っていたのです。これを「オプティカル・サイズ」と いい、金属活字からデジタルフォントへと時代が変わっても、その考え方は受け継がれています。
初期の頃のデジタルフォントでは、技術的な制約もあり、ひとつのスタイルを大きいサイズにも小さいサイズにも使わなければなりませんでしたが、近年 ではオプティカル・サイズを意識したフォントも出てきています。
まず最初に、オプティカル・サイズの基礎的な考え方と金属活字との比較を髙岡さんに解説していただき、次にオプティカル・サイズ を意識してつくられた良質なフォントをakira1975さんに紹介していただきました。
そのあとは会場に展示した資料を自由に見ていただけるよう、フリータイムとしました。中央のテーブルには嘉瑞工房所蔵の活字見本帳を並べ、壁面には小林章さん、麥倉聖子さんから送っていただいた資料の他、akira1975さんが選んだオプティカルサイズの欧文フォント25書体を展示。なにか質問があれば、その場ですぐに答えていただけるようなカジュアルな回でした。
当日の様子は2016年11月発売予定の『Typography 10』でも紹介する予定です。
[当日の展示内容]
1. 嘉瑞工房が所有している、金属活字の本文組の書体見本帳
Monotype社
Garamond, Bembo, Baskerville, Walbaum,Fournier, Bell, Ehrhardt,
Poliphilus, Barbou, Spectrum, Van Dijck, Sabon, Centaur
Stempel社
Optima, Palatino, Sabon, Garamond, Melior, Helvetica,
Janson, Baskerville, Caslon, Syntax, Clarendon
Bauersche社
Futura, Folio
*同じフォント名でも鋳造所によってデザインが違います。
また同じフォント名でもデジタルフォントと書体デザインが違う場合があります
Linotype社(デジタルフォントのカタログ)
Optima nova, Avenir, Frutiger next, Palatino nova,
Palatino Sans, Univers, Agilita, Vialog, Compatil
2. 小林章さんがデザインした、オプティカル・サイズをとりいれたフォントCliffordの紹介(パネル展示)
3. ドイツ在住のデザイナー麥倉聖子さんから書籍『Size-specific adjustments to type designs』(ティム・アーレンス氏との共著)の紹介とご自分ではオプティカル・サイズをどのように意識して仕事をしているかのコメントの紹介(パネル展示)。
4. TypeCacheのakira1975さんが推薦するオプティカル・サイズのフォント25書体。