TypeTalks 第34回

TypeTalks 第34回

初公開! 岩波書店の組版ルール 書籍組版は「いい加減」がいい加減!?

出演:
前田耕作(岩波書店)、上田宙(烏有書林)、高岡昌生(嘉瑞工房)
開催:
2016年3月26日(土)18:00~20:00

出版社ではどのようなルールに基づいて文字を組み、本をつくっているのでしょうか? 創業以来100年以上にわたり、文庫・新書・学術書など、さまざま本を世に送り出してきた岩波書店の組版ルールを大公開。同社製作部の前田耕作さんをゲストに、本文や見出しの組み方、行頭・行末の処理や記号の組み方など、厳格かと思いきや意外とゆるい「いい加減」な書籍組版の秘訣をお聞きしました。

イントロでは夏目漱石『坊っちゃん』を年代ごとに比較。1929年の初刷、1936年の改版14刷、1953年の改版34刷、1967年の改版50刷、1989年の改版77刷とさまざまな年代に出版された文庫本の本文組版を比較しました。

本編では、実際の書籍で使われた版面設計図を見ながら、製作部で指定したInDesignの設定と実際の書籍組版を比較。見出しのルール、行頭・行末のルール、禁則処理、約物のルール、調整のルールについてうかがいました。意外だったのは、西暦が泣き別れになってもよいとか、行頭に促音や音引きが来てもOKとか、組版ルールが案外ゆるかったこと。さまざまな種類の本を出版している岩波書店では、どんな内容の文章でも効率的に組版を行う必要があるので、ゆるい組版ルールのほうが対応しやすいのだとか。ルールを厳格にするのではなく、フレキシブルに対応していくという考え方なのだそうです。

講演タイトルになっている「いい加減」は、「でたらめ」という意味ではなく、出版社の作業性と読者の読みやすさの「ちょうどいい着地点」を探るという意味。岩波書店の組版ルールは、組版の作業性(コスト)、本の性格、作り手の思いを考慮しながら、ちょうどいい頃合いになるように考えられたハウスルールなのでした。

 

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