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2018.09.18

TypeCon2018 レポート3(カンファレンス3日目)

カンファレンス3日目。この日も9:00朝食、9:30からプレゼンテーション開始。6本のプレゼンテーション+コーヒーブレイク+キーノートのあと、閉会の挨拶があり、13時にはすべて終了。日曜日なので、早めにプログラムが終了しましたが、密度の高いイベントやプレゼンがありました。

 

まず、朝9:00からポール・ショウさんとポートランドの街を歩き、街中の文字を観察するイベント「TypeWalk」に参加。ポールさんの説明を聞きながら、参加者と一緒に街を歩くツアーです。前を通ったはずなのに見落としていた文字もたくさんありました。「昔、TypeWalkで文字を見るのに夢中になっていた人が車にひかれたことがあるから、みんな気をつけて」とか、怖いことをさらっというポールさん。確かに、車のことなんか忘れてしまうくらい楽しく、TypeConに行ったら、ぜひ参加してほしいイベントの一つです。

 

街あるきを途中で切り上げ、午前中に行われたテック系のプレゼンを聞きました。例えば、Googleが開発したフォント検証ウェブサイト「FontBakery」。このサイトにフォントファイルをアップロードすると、自動的にフォントファイルの検証を行い、不具合がないかチェックしてくれるというサービスです。フォントファイルのチェックまで手が回らない個人の書体デザイナーや小規模ファンダリーには手間が省けて便利そうですが、ファイルデータごとGoogleのサーバに蓄積される点が気になりました。

また、バリアブルフォント関連の発表も。フォントの形を自由に変えられるバリアブルフォントの特性を使ったアニメーションや映像、ゲームなどを紹介。フォントは、静的なものではなく、動的なアプリケーションであることを強く意識させられました。プラハの美大「Academy of Arts Architecture & Design in Prague」の学生がバリアブルフォントを制作し、小冊子やポスター、映像に展開した「The Next Big Things in Type」の発表もありました。

従来のように、書体デザイナーが完全な形のフォントを作ってリリースするのではなく、今後は使う側が調整するようなフォントが登場するかもしれません。バリアブルフォントの出現により、フォントを取り巻く環境が大きく変化していることを感じました。

このサイトでバリアブルフォントのアニメーションが見られます)

 

そして、TypeCon最後のイベントとなるのが、最終日の午後に行われる書体の講評会「TypeCrit」。講評希望者は、マーケットプレイス入り口に置かれている受付用紙(上写真。ジョン・ダウナーさんの手描き!)に自分の名前を書き込んで申し込みます(先着10名まで)。講評希望者と見学希望者は14:00にホテル3階の会議室に集合し、マシュー・カーターさん、ジョン・ダウナーさん・ジル・ピコッタさんが着席。講評希望者は一人ずつ順番に自分がつくった書体について説明し、3人が講評していくという流れです。

1人あたり10分の制限時間で、この日は7名が講評を受けていました。「ここの線はもっと細いほうがいいのではないか?」「小文字のbとdのバランスはこれでよいのかどうか?」など、具体的なアドバイスが飛び交います。一文字ずつの形についてではなく、文字を組んだときのバランスや線の太さ、エレメントの形などがそろって見えるかどうか、についてアドバイスが目立ちました。

つくった書体に対してダメ出しをするのではなく、制作者が自分で気づけるようにアドバイスをしてくださっていたと思います。大勢に囲まれての講評は緊張しますが、得るもののほうが多いと感じました。日本でもこのような講評会が開催できるといいなと思いながら、会場をあとにしました。

 

これですべてのプログラムが終了。充実した3日間でした。前回、シアトルのTypeConに参加してから、2年ぶりのTypeCon参加だったのですが、その間、バリアブルフォントが発表されるなど、テクノロジーの進化が目覚ましかったです。はじめて聞く情報も多く、現地に足を運んで情報を集めることの重要性を再確認しました。そして、なによりも本の中でしか知らなかった書体関係者と直接会って話しができたことが収穫です。今回も新たな出会いがたくさんありました。このご縁を活かして、今後も勢力的に情報発信していけたらと思います。